ゴッホ展 -こうして私はゴッホになった- [Exhibition]
最近はTwitterばかりでブログをかなり放置していましたが、久々に長文が書きたくなったので更新します。
先日東京に行く機会があって、国立新美術館で開催されていた「ゴッホ展 -こうして私はゴッホになった-」を観てきました。
これまで日本では、何度もゴッホの作品を展示する展覧会が開催されてきましたが、
この展覧会ではゴッホの作品よりも、ゴッホ青年がどんな場所で、何を見て影響を受けたり学び取ったりして、どのように作風を変えていったかに主眼を置いていました。
なので、ゴッホの油彩作品だけでなく、スケッチや習作はもちろん、同時代に師事した画家や交流のあった画家たちの作品も展示してありました。
展覧会のテーマの切り口が従来のゴッホ展とは一風変わっていて、それでいて明確だったので、観覧者の多さを除けば(どこのターミナル駅かと思うくらい人がいた…)、非常に興味深くて楽しめる展示でした。
展覧会では、ゴッホの画家人生を大きく6つの章(最初期→アントン・モーヴの教えを受けていた頃→ニューネン→パリ→アルル→サン=レミやオーヴェール=シュル=オワーズ)にわけているのですが、
章を追っていくにつれて、デッサンが上達していく過程や、浮世絵との出会いから構図が変化していること、印象派の画家たちとの交流から用いる色彩が格段に明るくなったことがよくわかりました。
一番変化が顕著だったのは、色使いでしょうか?
例えば、まだ絵を描き始めたばかりの頃は、このような地味な色使いでしたが、
《秋のポプラ並木》1884年 ファン・ゴッホ美術館(フィンセント・ファン・ゴッホ財団)
1887年にパリでモネ、ピサロ、シスレー、スーラなどの印象派の作品に触れた頃には、点描画風のタッチや淡く明るい色彩を用い始めています。
《灰色のフェルト帽の自画像》1887年 ファン・ゴッホ美術館(フィンセント・ファン・ゴッホ財団)
そして、1888年に南仏のアルルにいた頃の作品は、浮世絵のような平坦で大胆な構図や強烈な色彩を用いるようになります。
捕捉すると、浮世絵というのはモチーフを大きく描いて全面に押し出し、影を表現しないという特徴があります。
《アルルの寝室》1888年 ファン・ゴッホ美術館(フィンセント・ファン・ゴッホ財団)
何だか同じ人物が描いたとは思えないくらい変化していっています。
でも、面白いのは、こうして色彩や構図が変化していっても、戸外を中心とした製作や描かれるモチーフ、絵全体に漂う素朴な雰囲気は変わらないところです。
--------
何にでも言えることですが、世間から一目置かれる人々は、その時代の状勢の変化を上手く取り込んで自己表現を日々進化させていく一方で、その中に潜む確かな一貫性…「軸」があります。
それが、今回の展覧会を観て一番強く感じたことでした。
ただ、今はゴッホに訊いてみたいです。「あなたは変わるものと変わらないものの違いを意識して絵を描いていましたか?」と。
最後に余談ですが、今回の展覧会はチケットのデザインが可愛かったです。
しかも、ゴッホが好んで用いた青と黄色の対比を使うとは何とも粋なチケットです。
国立新美術館での開催は残念ながら12月20日で終了してしまいましたが、新年から福岡→名古屋と巡回するみたいです。
没後120年 ゴッホ展-こうして私はゴッホになった-
http://www.gogh-ten.jp/index.html
福岡:九州国立博物館 2011年1月1日〜2月13日
名古屋:名古屋市美術館 2011年2月22日〜4月10日
先日東京に行く機会があって、国立新美術館で開催されていた「ゴッホ展 -こうして私はゴッホになった-」を観てきました。
これまで日本では、何度もゴッホの作品を展示する展覧会が開催されてきましたが、
この展覧会ではゴッホの作品よりも、ゴッホ青年がどんな場所で、何を見て影響を受けたり学び取ったりして、どのように作風を変えていったかに主眼を置いていました。
なので、ゴッホの油彩作品だけでなく、スケッチや習作はもちろん、同時代に師事した画家や交流のあった画家たちの作品も展示してありました。
展覧会のテーマの切り口が従来のゴッホ展とは一風変わっていて、それでいて明確だったので、観覧者の多さを除けば(どこのターミナル駅かと思うくらい人がいた…)、非常に興味深くて楽しめる展示でした。
展覧会では、ゴッホの画家人生を大きく6つの章(最初期→アントン・モーヴの教えを受けていた頃→ニューネン→パリ→アルル→サン=レミやオーヴェール=シュル=オワーズ)にわけているのですが、
章を追っていくにつれて、デッサンが上達していく過程や、浮世絵との出会いから構図が変化していること、印象派の画家たちとの交流から用いる色彩が格段に明るくなったことがよくわかりました。
一番変化が顕著だったのは、色使いでしょうか?
例えば、まだ絵を描き始めたばかりの頃は、このような地味な色使いでしたが、
《秋のポプラ並木》1884年 ファン・ゴッホ美術館(フィンセント・ファン・ゴッホ財団)
1887年にパリでモネ、ピサロ、シスレー、スーラなどの印象派の作品に触れた頃には、点描画風のタッチや淡く明るい色彩を用い始めています。
《灰色のフェルト帽の自画像》1887年 ファン・ゴッホ美術館(フィンセント・ファン・ゴッホ財団)
そして、1888年に南仏のアルルにいた頃の作品は、浮世絵のような平坦で大胆な構図や強烈な色彩を用いるようになります。
捕捉すると、浮世絵というのはモチーフを大きく描いて全面に押し出し、影を表現しないという特徴があります。
《アルルの寝室》1888年 ファン・ゴッホ美術館(フィンセント・ファン・ゴッホ財団)
何だか同じ人物が描いたとは思えないくらい変化していっています。
でも、面白いのは、こうして色彩や構図が変化していっても、戸外を中心とした製作や描かれるモチーフ、絵全体に漂う素朴な雰囲気は変わらないところです。
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何にでも言えることですが、世間から一目置かれる人々は、その時代の状勢の変化を上手く取り込んで自己表現を日々進化させていく一方で、その中に潜む確かな一貫性…「軸」があります。
それが、今回の展覧会を観て一番強く感じたことでした。
ただ、今はゴッホに訊いてみたいです。「あなたは変わるものと変わらないものの違いを意識して絵を描いていましたか?」と。
最後に余談ですが、今回の展覧会はチケットのデザインが可愛かったです。
しかも、ゴッホが好んで用いた青と黄色の対比を使うとは何とも粋なチケットです。
国立新美術館での開催は残念ながら12月20日で終了してしまいましたが、新年から福岡→名古屋と巡回するみたいです。
没後120年 ゴッホ展-こうして私はゴッホになった-
http://www.gogh-ten.jp/index.html
福岡:九州国立博物館 2011年1月1日〜2月13日
名古屋:名古屋市美術館 2011年2月22日〜4月10日
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