牧尾 英二著:利益第二主義―過疎地の巨大スーパー「A-Z」の成功哲学 [Book]

A-Zスーパーセンターは、株式会社マキオが鹿児島県内を中心とした過疎地域で24時間営業の大型店舗展開をするスーパーセンター業態店舗です。
1997年に過疎地域である鹿児島県阿久根市で開業したのを皮切りに、現在は他の過疎地域も含めて3店舗展開しています。

これまで、朝日新聞やNHK総合ドキュメント にっぽんの現場、テレビ東京「カンブリア宮殿」などに採り上げられたそうです。

[1]過疎地域でワンストップ・エブリデイロープライス・年中無休24時間営業
A-Zスーパーセンターの特徴は、以下の4つです。
・過疎地域での巨大店舗による出店
・生活費嬬品が一カ所ですべて揃うワンストップの店舗
・いつでも安さを追求するエブリデイ・ロープライス
・いつでも買い物ができる年中無休の24時間営業

過疎化と高齢化が進む小商圏に巨大な生活総合店をつくるという発想は、従来の小売業界にはなかったものだったので、A-Zスーパーセンターが出店する際には、周囲から「うまくいくはずがない」「いまに閑古鳥が鳴く」などと囁かれたそうです。

鹿児島県阿久根市は、人口24,000人程のいわゆる過疎地域で、3人に1人が65歳以上と高齢化が進んでいます。漁業と農業が中心の田舎町で、商圏人口は多く見積もっても50,000人です。
市内には、A-Z以外に目立った大型店はなく、旧商店街と小型スーパーがいくらかあるくらいで、ほとんどの店が夕方6次頃には閉店していました。
しかも、スーパーに並ぶ商品の品揃えは少ないうえに、ほとんどが定価に近い価格だったそうです。

社長の牧尾氏は、そんな過疎地域だからこそ、都市部と変わらない利便性を享受できるように、「利益第二主義」「地域生活者のお手伝い」を掲げ、「あちこちで買い回りをしなければ揃えられなかった生活費嬬品が一カ所ですべて揃うワンストップの店舗。いつでも安さを追求するエブリデイ・ロープライスの店舗。いつでも買い物ができる年中無休の二四時間営業の店舗」を追求しました。

[2]開店後の実績
A-Zあくねは、開店から12年経過した現在、年間650万人、1日平均1万7,000人が来店し、燃焼は100億円を突破したそうです。

田舎の住民は、早寝早起きと一般的に思われていますが、A-Zあくねの夜7時から朝8時までの売上構成比が全体の4割を占めるそうです。

また、生活必需品はすべて揃えるというスタンスから、36万点近くの品数があり、醤油だけでも地場のメーカーを中心に約260点揃えているそうです。
そのため、広大な店舗面積を要し、売り場面積は18,000平米、駐車場も1,500台収容できるものとなっています。

[3]地域インフラとしての大規模小売店鋪
本書の中で、牧尾氏は「過疎地に大型スーパーを造るということには、道路、上下水道、電気などに準ずる、インフラ整備に近い意味があるのです」と説いています。

実際に、A-Zあくねは、小売店として地域住民に衣食住に困らない生活を提供している他、災害時には、自家発電によって営業を続け、食料と水を始め、ブルーシートやぞうきん、バケツ、果ては建材まで提供しているそうで、地域の防災拠点としての役割も担っているように見えます。

また、小売店であると同時に、人と人が触れ合う「地域の社交場」でもあると牧尾氏は語っています。早朝には店内を散歩するお年寄りの姿が目立ち、昼間は主婦の井戸端会議が開かれます。夜になると家族団らんの場として賑わっています。A-Zの店舗は、総合的に地域住民の生活の拠り所となっているのです。

この他にも、バスなどの公共交通がなく、財政の厳しい阿久根市に代わって、交通の便が悪いお年寄りたちのために、片道100円で買物バスを運行しているそうです。


--------
A-Zのこういった試みは、社会的企業と位置づけられると思います。
牧尾氏も仰っていましたが、過疎地域にとって大規模小売店鋪が地域インフラとして果たせる役割は非常に大きいと思います。
ただ、私がA-Zに関して一つ気になったのが、これらの試みによって地元の小売店は逆に打撃を受けているのではないか、ということです。
競争原理といってしまえばそれまでですが、せっかく地域貢献を考えているのですから、次はもっと共存できる道を模索したらいいのではないでしょうか。






nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:地域

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。