北海道組 Lecture Series 04「永山祐子」 [Architecture]

7月23日(金)19:00〜20:30に、内田洋行ユビキタス協創広場で永山祐子さんの講演会がありました。

永山さんは、青木淳建築計画事務所出身の若手女性建築家で、建築だけに留まらず、ファサードやインテリアデザイン、果てはプロダクトまで幅広く手掛けていらっしゃいます。

[1]イメージからの出発
永山さんは、作品を語るときには、作品のもととなったイメージを提示されていました。
例えば、代表作「丘のある家」では山なりになっていて向こう側が見えない中国の太鼓橋の、葬祭場のプロジェクトでは襖が何枚も奥に続く伝統的な日本の民家の写真を見せていただきました。
永山さんは、設計をする際、設計条件からひとつひとつ積み上げて形を決めていくのではなく、最初にそういった自己の体験に基づくイメージが浮かんで、それに向かって形が決まっていくそうです。

そんな永山さんは、
自己の体験を、誰でもわかる客観的なストーリーに繋げるのがとても上手でした。
講演後の懇親会でその秘訣を訊いてみたら、いつも自分がいいなと思ったものに対して、なぜいいと思ったのか分析を欠かさないとのこと。

だから、指導する学生にも、毎日スクラップブックに1ついいなと思った画像を貼らせて、なぜそれがいいと思ったのか分析したコメントを併記させてるそうです。


[2]モノとヒトの分布
永山さんはインテリアデザインを手がける際は、モノの疎密と分布、そして人の分布のバランスを考えるそうです。

永山さんは、インテリアデザインだけでの完成を目指すのではなく、モノ(商品)が置かれて初めて成立する空間をつくることを意識しているみたいです。
「ANTEPRIMA」のインテリアデザインの紹介で、商品が置かれる前と後の写真両方を見せていただいたのですが、雰囲気が全く異なっていて驚きました。
色鮮やかな鞄たちがないと、明るく女性的な空間が一変、モノクロのストイックな空間になっていたのです。

また、モノの置かれ方と同じくらい意識されていたのが、店内を歩く客がどこに立つかです。
什器を置くことで、そこには人は立ちません。
そうやって、モノやヒトの分布をいかにハードで調節するかを考えているそうです。
言われてみれば当たり前のことですが、永山さんのように活躍されている方に実作とともに見せていただくと、とても心に響きます。


[3]光
「丘のある家」では「光」のことが多く語られていました。
そもそも、丘のある家の丘は、光の反射面で明るいと感じさせるために生まれたそうです。

光の反射面が、光を綺麗に見せてくれることから、
丘のある家の照明や採光は、すべて反射によって光を作っているそうです。
だから、照明はすべて間接照明です。

興味深かったのは、多くの建築家が光の中でも「自然光」を重要視するのに対して、
永山さんは「自然光」も「人工光」も等価に扱っていたことです。

昼は、自然光が反射して室内に入り込むに対して、夜は照明の間接光が室外へ漏れていく。
写真でその対比を見せていただき、昼夜で異なるその表情に魅せられました。


[4]丘の向こう
「丘のある家」と「南青山」で共通して語られていたのは、丘(曲面)の向こう側に感じる空間の広がりでした。

丘は、稜線の向こうの景色が見えないので、空間の向こう側に奥行きを感じます。
「南青山」でデザインされた垂直に立つ丘は、稜線が見えなくて建築の高さがわからなくなります。

その丘のイメージは、永山さんが中国で体験した太鼓橋が原点にあるそうです。
太鼓橋は山なりになっているので、橋の中央まで上がって行く途中は橋の向こう側が見えず、どこまでも橋が続いているようにも感じます。
つまり、山なりの先に何があるのか見えないので、どこまでも空間が広がっているように感じるのです。
そこから、丘を作ることで空間の広がりを演出することに繋がっているそうです。


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永山さんのお話は、作品のテーマとそれに対する解き方がとてもわかりやすかったです。
空間体験という感性的な話から出発するので心が惹きつけられ、そこからいい意味でドライな話にもっていくので、筋立てが通っていて理解がしやすかったのだと思います。
懇親会では、相手がディベロッパーだったら数字的な話に持っていく、というふうに、施主に合わせてストーリーを変えるとも仰っていました。
そういうところも含めてすごく参考になりました。
今までで聞いた建築家の講演の中では、五本指に入るわかりやすい講演会でしたので、聞きに行くことができて本当によかったです。

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