銀山温泉 [Architecture]

山形県尾花沢市の辺境に、銀山温泉はあります。

銀山温泉は、NHKの連続テレビ小説「おしん」で有名になりました。
いくつもの橋が連なる川の両岸に、大正から昭和初期にかけて建設されたモダンな木造旅館が並んでいます。

温泉街としての規模はそれほど大きくはありませんが、とても風情があります。
電線を地中化しているところや通りにガス灯を設けているところ、看板のデザインなどから、町ぐるみで歴史的景観を大事にしているのも伝わってきます。

銀山温泉_01.jpg

銀山温泉にある建物は、どれも三四層ほどで、白い壁とバルコニーを備えています。
夜になると、ガス灯が灯り、大正ロマン溢れる光景を目にできるそうです。

温泉街は景観保全のために車両進入禁止で、温泉客は温泉街の入口に車を置いて、徒歩で温泉街に向かいます。

銀山温泉_02.jpg

ここには、隈研吾さんの建築が2件あります。

一つは、旅館「藤屋」です。
白壁で格子を使っていて、3階建てになっていますが、バルコニーがなかったり、入り口の作り方が違ったり、屋根が瓦屋根でなかったりと、周囲との足並みが揃っていない部分が多々見られます。
使用されている木の色が落ち着いてきたら、もしかしたら周囲と馴染むのかもしれませんが、この状態を見る限りでは、景観に関して賛否両論がありそうです。

銀山温泉_03.jpg

もう一つは、「しろがね湯」(2001年)という共同浴場で、狭小敷地を使った2層の建築です。
暗い色の格子でつくった外観で、周りにある既存の建築とのバランスをとりながら、鉄壁や大きなガラス窓をつくることで、「今っぽさ」を演出しています。
周囲との調和を持ちつつも、それに迎合しすぎず、隈さんらしさを表現しているように感じました。
ただ一方で、内部で温泉を利用しているので、それが躯体や外装の格子に染み出したのか、白く汚れてしまってかなり腐敗が進んでいるのがとても気になり、もったいないと思いました。

銀山温泉_07.jpg


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こういう歴史的景観保全が求められる場所での設計は難しいと思います。

もう既に、その地域の確固たるデザインのルールがあって、それに従ってそのまま設計すれば、歴史的景観を壊さないその地域らしい建築ができあがります。
でも、それだと、建築家がわざわざ設計する意味がなくなってしまいます。
また、現代で新しく建てているのに、大正時代と同じものをつくっては、歴史テーマパークの建物をつくっているみたいで逆に嘘くさくなってしまいます。

既存のルールと建築家のアイデンティティ、そして、現代らしさ、この3つのバランスをうまくとれるのが、建築家が建築家たる所以なのかもしれません。


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とみっち

電柱や電線のある風景も日本らしいのかなって思うけど、
景観を大事にしてるってステキですよね☆
この場所はおしんで有名なんですね。
おしんは小さな頃やってたけど、ちゃんと見たことないかも。
ほんと映画やドラマに出て来そうな街並ですね☆
by とみっち (2010-08-23 16:46) 

natsukoaiba

個人的には、電柱や電線があった時代…
例えば、昭和時代以降につくられた町並みなら、電柱や電線がある方が雰囲気があると思うんですけど、
この銀山温泉は、大正時代の町並みなので、ない方がいいのかなと思いますね♪

by natsukoaiba (2010-08-23 21:56) 

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